センター長挨拶
一橋大学にはこれまで、都市経済学、交通経済学、空間経済学、都市政策、不動産経済学、不動産ファイナンスなど、都市・不動産に関連する分野で活躍する多くの研究者が集積してきました。
今回、「都市空間・不動産研究センター(Center for Urban and Real Estate Studies: CURES)」を新たに設立し、こうした人的資源の集積を活かして研究をいっそう推進するとともに、研究成果を広く社会に発信していくことを目指すこととなりました。
都市と不動産は、私たちの日常生活と経済活動の基盤であると同時に、社会全体の構造や価値観を映し出す鏡でもあります。
現在、人口の高齢化・減少、環境問題、技術革新、ライフスタイルの多様化といった変化が急速に進む中で、都市と不動産を取り巻く状況はかつてないほどに複雑で、かつ流動的なものとなっています。
こうした状況の中で、都市と不動産に対する新たな理解と、持続可能で包摂的な社会の構築に資する制度設計が求められています。
本センターは、こうした課題に応えるべく、都市および不動産に関する学際的かつ実証的な研究を推進し、その成果をもとに政策提言や市場制度の改善に資する知見を国内外に発信していくことを目的として設立されました。
一橋大学が長年にわたり培ってきた経済学、商学、法律学、社会学といった社会科学の伝統に加え、近年急速にその重要性を増しているデータサイエンス、空間情報分析、AI技術といった新たな知的基盤を融合し、先端的な研究を展開してまいります。

都市空間・不動産解析研究センター
センター長 清水 千弘
本センターは、以下の三つの使命を中核に据えて活動してまいります。
第一に、都市構造や不動産価格、不動産市場制度、土地利用などのテーマに関する高度な学術研究の推進です。
とりわけ、不動産価格指数の整備、住宅政策と所得格差の是正、都市のレジリエンス向上、そして地方都市の再生といった今日的課題に対しては、精緻な理論と高品質なデータに基づく分析が不可欠であると考えています。
第二に、政策形成との連携強化です。
本センターは、関係省庁、地方自治体、さらにはOECD、IMF、国連といった国際機関との連携を通じて、エビデンスに基づいた政策立案(EBPM)を支援してまいります。
大学における学術研究を社会実装につなげ、現実の課題解決に貢献することは、社会に対する大学の重要な責務の一つであると認識しています。
第三に、次世代の研究者・実務家の育成です。
都市と不動産をめぐる課題は今後さらに多様化・複雑化することが予想される中、理論と実務を横断的に理解し、国際的視野と実証的手法を兼ね備えた人材の育成が急務です。
本センターでは、大学院生や若手研究者に対して、実務との接点を重視した教育・研究機会を提供し、広範な視野と深い専門性を併せ持つ人材の輩出を目指してまいります。
加えて、国際的な研究ネットワークの強化も、当センターの重要な柱の一つです。
これまでに、MIT、ケンブリッジ大学、LSE、清華大学、香港大学、シンガポール国立大学、アムステルダム大学など、世界を代表する都市・不動産研究機関と深い交流を築いてきました。
今後は、こうした連携を一層強化し、共同研究や人材交流を進めるとともに、東京という世界有数の都市に立地する地の利を活かし、アジアにおける都市・不動産研究の中核拠点としての機能を果たしていくことを目指します。
私自身もこれまで、国内外の研究者や政策実務者の皆さまと協働し、不動産価格指数の整備、住宅市場制度の国際比較、空間計量経済学的手法を用いた都市構造の実証分析に取り組んでまいりました。
今後はその経験を踏まえ、多様なバックグラウンドを持つ研究者・実務家・行政関係者との対話と協働をさらに深め、開かれた、社会に貢献するセンター運営を実現していきたいと考えております。
最後に、本センターの設立にあたり、多大なるご支援とご尽力をいただいた一橋大学関係者の皆さま、連携機関の皆さま、そして日頃より研究活動にご協力いただいているすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
都市と不動産に関する新たな知の創出と、それに基づく社会的価値の実現に向けて、誠心誠意取り組んでまいります。
今後とも、皆さまの変わらぬご指導とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
清水 千弘