一橋大学社会科学高等研究院 都市空間・不動産解析研究センター
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【開催報告】EMG & Urban/Real Estate Workshop 2025

【開催報告】EMG & Urban/Real Estate Workshop 2025

2025/10/23

開催日:2025年10月23日

プログラム:https://cures.hias.hit-u.ac.jp/en/event/20251023

 10月23日に開催されたEMG & Urban/Real Estate Workshop 2025では、25名の参加者が出席し、都市と不動産に関連する最新研究の紹介と討論を行った。当日は、植杉威一郎教授 (一橋大学)、平野智裕教授 (The University of London)、清水良樹准教授 (一橋大学)、Thomas Monnier講師 (一橋大学)、Li Peiran講師 (一橋大学)の5名が研究内容を発表した。

 植杉威一郎教授は、日本銀行のREIT購入プログラムを対象に、中央銀行が非銀行機関の株式を購入することが経済に与える影響を分析した研究内容を発表した。研究の結果、中央銀行による株式購入は、コストを低下させ、よりリスクの高い投資を促進し、銀行の貸出先をREITセクターにシフトさせることで、リスクテイクを刺激し、広範な貸出市場に影響を与えることが示された。リスクの高い投資の負の効果などに関する検証可能性についても議論された。

 平野智裕教授は、担保価値の上昇や低金利政策による信用拡大が、長期的な生産性および経済成長に与える影響の分析について発表した。分析の結果、不動産融資による信用拡大は生産性を阻害する一方で、設備投資向けの信用拡大は生産性と成長を促進することが示されている。金融規制が存在しない場合、拡張的な金融政策は土地投機を助長し、生産的投資を減少させ、低金利と低成長を招くが、一時的な資産バブルを生じさせる可能性がある。また、その福祉効果は、資産価格上昇期を経験した世代と、その後の低成長期を生きる世代とで大きく異なる。さらに、本研究では土地を考慮したマクロ経済モデルを提示し、低金利環境下では土地からの高い収益が期待される一方で、その結果として長期的な生産性の低下を引き起こすことを示している。日本の人口減少社会において、このモデルがどのように適用・改良可能かについて、活発な議論が行われた。

 清水良樹准教授は、逆日歩が流動性および株式市場に与える影響に関する研究成果を発表した。日本では、一定数以上の株式を保有する株主に対して優待商品やサービスを提供する制度が存在するが、本研究では、その優待権利日の前後で株式需要が高まり、逆日歩が上昇する傾向にあることを実証した。この結果は、日本の株式市場において、個人投資家が機関投資家に比べて手数料面で不利な立場に置かれる可能性を示唆している。

 Thomas Monnier講師は、都市と郊外における労働市場を対象としたモデリング研究について発表した。郊外への移住意向を左右する要因を分析した結果、選択可能な職種の減少よりも、賃金の低下が移住意向により強い影響を与えることを明らかにした。さらに、都市部への過度な人口集中を緩和し、郊外部への適切な労働力の分配を実現するためには、郊外の企業においても十分な賃金水準を確保できる環境整備が必要であることを提案した。

 Li Peiran講師は、台風が貿易に与える影響を検証する研究成果を発表した。本研究では、台風の影響がどの程度の期間持続するかに着目し、その影響期間を考慮した分析を行っている。対象地域は中国の海口市(Haikou)であり、2011年から2017年までの月次貿易データ(Panjivaデータ)を用いて分析を実施した。風速に基づいて分類された台風の影響範囲から被災地域を特定し、時空間的に台風の影響を定義している。研究の目的は、この台風の影響が貿易取引額にどの程度影響を及ぼすかを明らかにすることである。台風が貿易に影響を与えるメカニズムとしては、出航の困難化といった直接的な影響に加え、工場などの被害による生産遅延といった間接的な影響も想定される。実際の分析結果からは、台風発生後およそ5か月間にわたって影響が持続しており、港湾よりも工場への影響が大きかった可能性が示唆された。さらに、地域別・風速別・産業別の分析からも、台風が工場活動に影響を及ぼし、その結果として貿易取引に波及する可能性が確認された。一方で、強風を伴う台風の発生件数が7年間でわずか4件と少ないため、統計的な検証には限界がある点も指摘された。