一橋大学社会科学高等研究院 都市空間・不動産解析研究センター
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概要

一橋大学 都市空間・不動産解析研究センター(CURES)設立趣旨

近年、都市の構造変化や不動産市場の動向が、経済全体や社会構造に与える影響はますます大きくなっています。
日本においては、高齢化・人口減少という構造的課題が進行する一方で、地球規模では都市化の加速、環境制約の深刻化、生活様式の多様化、さらにはデジタル技術の進展といった大きな変化が生じており、都市と不動産を取り巻く環境は急速に変容しています。
こうした変化に対応し、持続可能で包摂的な都市社会を構築するためには、商学、経済学、法律学、社会学といった一橋大学が伝統的に強みを有する社会科学分野に加えて、近年急速に発展を遂げているデータサイエンスやAI等の技術分野を融合させた、学際的かつ実証的な研究が求められます。
そしてそれは、都市と不動産に関する理論的理解を深化させるのみならず、政策立案や市場設計への実質的な貢献に結びつけていくことが期待されます。

このたび一橋大学では、「都市空間・不動産解析研究センター(Center for Urban and Real Estate Studies:CURES)」を設立し、上記の学術的・社会的要請に応えるべく、都市および不動産に関する先端的な研究と政策提言を推進するための体制を整備することといたしました。
本センターは、都市・不動産分野における国際的研究拠点として、日本国内のみならず、アジアひいては世界をリードする知的基盤を築くことを目指しています。

国際的ネットワークとの連携

本センターは、世界の主要な都市・不動産研究拠点との連携を強化し、グローバルな研究ネットワークの一翼を担うことを基本理念としています。
すでに、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の Center for Real Estate、英国ケンブリッジ大学の Department of Land Economy、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の Cities Programme、中国・清華大学の Real Estate Research Center、シンガポール国立大学(NUS)の Institute of Real Estate and Urban Studies(IREUS)など、世界的に著名な研究センターが、都市・不動産研究の最前線を牽引しています。

一橋大学は、これらの国際的研究拠点とすでに密接な関係を築いており、今後は、センターの設立を契機として、共同研究や人材交流を一層促進していく方針です。
特に、グローバルな都市指標、不動産価格指数、都市政策の評価、空間データの統合分析、住宅市場制度の国際比較といった共通課題に対して、共同プロジェクトの実施や国際シンポジウムの開催を通じて、知的成果の共有と国際的な波及を図っていきます。

日本における研究拠点としての意義
これまで日本国内では、都市および不動産に関する研究が十分に制度的・体系的に整備されてきたとは言いがたく、大学における専門的な研究拠点も限定的でした。
一橋大学は、社会科学に軸足を置いた研究教育機関として、経済学、統計学、政策科学、そして法制度研究などの分野において蓄積された知見を活かしつつ、データ駆動型の実証研究を展開することによって、都市・不動産に関する日本国内の研究・教育の中核的な役割を担うことを目指します。

センターの主要活動

本センターでは、以下の3つの柱を軸として活動を展開していきます。

  1. 学術研究の推進
    都市構造と土地利用、不動産価格形成メカニズム、住宅政策と所得格差、商業地と地域経済の相互作用など、多様かつ複雑な課題に対して、実証研究と理論研究を融合させたアプローチを取ります。AIやビッグデータ、地理空間情報(GIS)、高度な統計解析手法を駆使し、政策的示唆に富んだ研究成果を積極的に発信していきます。
  2. 政策との連携
    国土交通省、内閣府、地方自治体、さらにはOECD、IMF、国連などの国際機関と連携し、エビデンスに基づく政策立案(EBPM: Evidence-Based Policy Making)を支援します。具体的には、不動産価格指数の整備、空き家対策、都市の持続可能性評価、スマートシティ政策などの分野において、科学的根拠に基づいた政策提言を行います。
  3. 人材育成と教育
    都市・不動産分野に関心を持つ大学院生・若手研究者に対して、国際的水準の教育および研究指導を提供します。加えて、民間企業や官公庁との連携を通じて、理論と実務を架橋する人材を育成します。将来的には、都市と不動産を横断的に理解する「都市・不動産専門家」の養成プログラムも構想しています。

    今後、本センターは定期的に国際会議・研究ワークショップを開催し、世界中の研究者や政策実務者を一橋大学に招聘することで、知的ネットワークの拡張と深化を図ります。また、国内外の大学、研究機関、政府機関、民間企業と連携し、日本発の都市・不動産研究の知的成果を世界に発信する「知識のハブ」となることを目指します。
    特に、世界有数のグローバル都市である東京に立地する地理的優位性を活かし、アジアにおける都市・不動産研究の中核拠点としての機能を果たしていきます。

    一橋大学都市空間・不動産解析研究センター(CURES)は、日本社会が直面する課題と国際的な都市・不動産に関する諸課題とを架橋し、理論と実践、国内と国際、アカデミアと政策・ビジネスをつなぐ「知のプラットフォーム」として、持続可能で包摂的な都市と不動産の未来を創出することを目指します。